錆びた夜でも恋は囁く おげれつたなか 2015年のベストヒットはおげれつ!
おげれつたなかさんの「錆びた夜でも恋は囁く」を読みました。本作を読んで、コンプリートを果たしました。2015年11月現在でコミックスは4作品発売されています。
「恋愛ルビの正しいふりかた」のほうは電子書籍で購入したのですが、今作を読んで紙バージョンで買い直そうと決意いたしました。BLはやっぱり隅々まで、紙で読みたいのよね。電子だと修正が多いって言うし( ̄д ̄)
おススメ度 ★★★★★ 私は好き。
表紙、なんで泣いてるの?
実は衝撃的な展開が待ち受けています。
これよりネタバレ感想に入ります。
今回はかなりのネタバレ!
弓冬次は恋人のかんちゃんから殴られている。でも、弓はかんちゃんから離れられない。体には無数の殴られた痣があるが、バイト先のおばちゃんらは恋人とラブラブだと思っている。弓が明るい性格で、殴られているなんて想像がつかないからだ。
弓のバイト先に、偶然、中学時代の友達の真山が現れる。真山とは中学時代に淡い恋心を抱いた関係。でも、弓は本当の自分を真山の前では出せずに高校が離れてからは連絡を一切立っていた相手だった。
――ってな感じで、弓(主人公・受け)は恋人のかんちゃんからDVを受けています。かんちゃんは高校の時の同級生で、暴力を振るうようになったのは社会人になってからです。仕事がうまく行かないはけ口にされています。
一方の間山は大学院に進み、中学時代とは違って友達が出来ていたり、煙草を吸うようになっています。中学時代はコミュ障気味で、現在も言いたいことを呑みこんでしまう性格は変わっていません。
再会した二人はラインを交換します。実は中学のころにも連絡先を交換していたのですが、真山は一度も弓へ電話を掛けたことがありません。根は優しくていい子なんだけど度胸がない男なのです。でも気持ちを素直に表現できる子でキスなんかも済ませてしまってるんだけどね(笑)
大人になった真山ですが、少しだけ成長しています(笑)今度はラインを返してきて、毎日、弓のバイト先に現れるようになります。
こうして、二人は距離を近づけるのですが、かんちゃんとの関係を見ないようにしていた弓に綻びが出始めます。気持ちがどんどん真山に向かって行ってしまうのです。会う理由を探し、真山に会いたいって思うようになります。でも、弓は真山に対する気持ちにブレーキを掛けなきゃって思うの。
これは、DVを受けてるから弓の思考が変になってるのかな。正常なら、真山が好きなら、暴力カレシなんて捨てて真山に行くべきだもんね。頑なに真山を好きになってはいけないって自分を律しているような気がします。かんちゃんとの付き合いは腐れ縁で、高校のときの普通に恋人に戻れるかもしれないってどこかで思っているのもあるのかもしれないし。何かきっかけがないと、情のせいで長い間離れられないってこともありますね。一番の問題は弓の心の問題でしょうかね~。
そんな中でも、かんちゃんのDVはエスカレートしていく。目立つところ、顔を殴ったり、背中に煙草の火を押し付けたり、と。顔に傷バンを貼った弓を見て、バイト先のおばちゃんは弓の喧嘩したって嘘を本気にするんだけど、真山は本気で心配する。真山は暴力のことを知って、別れた方がいいって言うんだけど、弓はうんとは素直に言わない。
弓は弱い自分を他人に知られたくないんだと思う。知られるのが怖い。大丈夫って笑い飛ばせば周囲も笑うし、ああ大丈夫なんだって気に留めなくなる。でも、真山は本当の自分に気が付いて剥き出しの心に触れてくる存在なんだろうね。
再び、真山は弓の元に現れます。真山は怪我の理由や暴力カレシのことを隠していることを責めます。知られたくないのはかわいそうな自分。隠したいのは傷ついている自分。って真山に言われてしまいます。
それは弓にとって認めたくない自分の姿だった。それに気が付いて俺に言うおまえの存在が一番傷つけているって弓は真山に泣きそうな顔をしながら伝えるのです。
はっきりと言われて、真山は自分が弓を傷つけいたことに気が付くのです。
真山、真に受けんなよー。真山は恋愛面にたいしてはかなりの鈍感なんです。さっさと、暴力カレシと別れて俺と付き合えよ!って、かんちゃんから弓を奪ってしまえばいいじゃん。
その後、真山は弓の元にぱったりと現れなくなります。会えなくなっても、弓は無意識に真山のことを考えてしまい上の空になります。
その変化に気が付いたのは、暴力カレシこと――かんちゃんでした。淋しげに弓が「真山」と呟く姿を背後で聞いているのです。
かんちゃんはかんちゃんで弓にたいして暴力を振るってしまう自分に傷ついています。キャパがいっぱいいっぱいで殴っているだけなんです。本当はこんな自分が嫌だって嘆いているんです。
かんちゃんは弓に向かって言います。「助けてくれ」って。
傍にいると二人は駄目になってしまうことをかんちゃんはきちんと気づいていました。これまでは弓が見ない振りすることで関係を続けてこれたけど、他に好きな奴がいるなら、そっちに行けよってな感じで泣きながら訴えるかんちゃんは意外と良い奴でした。いや、暴力反対( `ー´)ノではあるんですけどね。かんちゃんのその後の恋愛は、「恋愛ルビ~」の本でスピンオフがあります。
弓は自分の心と真逆の行動を取ったりする子なんですね。素直のような素直じゃないような。この後、バイトは辞めるし、携帯も繋がらないようになる。だけど、バイト先の外の喫煙所には現れる。ここは真山とよく一緒に喫煙した場所なんです。
真山は弓を傷つけてしまったことに傷ついているんですね。でも、本人曰く、往生際悪く、弓のことを気に掛けてしまう。それで、ようやく言うんです。弓に「好きだ」って。でも、阿保杉。自己完結して、「でも、もうあきらめるよ」って続くんです。
そう言い残して立ち去ろうとする真山に向かって、「バカ真山」って叫んで中学時代の携帯電話(失くしたって言ってた携帯電話)を真山に投げつける!!
それでようやく本音を言い合い、晴れて二人は恋人同士になります。
真山がコミュ障で大切なことを伝えられない、自己完結させてしまう、あと一歩の勇気が足りない。弓は弓で、弱い自分を隠したい、強がる癖がある、という性格。中学時代から惹かれあって心は離れられないのに、二人の性格のせいで遠回りしてしまったんですね。
ラストの汁だくシーン、弓が髪の毛をさっぱり切ったカッコいい姿、書下ろしの汁だくシーンは絶品ですので、是非読んでみてください。
私としては真山が大学院生って言うより、もうちょっと年齢が上のほうが良かったかも。28歳くらいがいいかな。
ごちそうさまでした♪