きょうのBL、これ読んだ。

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ジェラールとジャック よしながふみ そして、フランス革命。(5)

よしながふみさんの「ジェラールとジャック

数回に分けて紹介してきましたが、今回で最後となります。

 

ジェラールとジャック (白泉社文庫)

ジェラールとジャック (白泉社文庫)

 

 

 ネタバレ感想に入ります。

 

 

ラウルの屋敷から、逃げるように退散したジェラールとジャック。馬車を走らせる中、世間では市民たちが声を荒げています。

 

「市民諸君、今こそ、武器を取れ、武器を取れ!」

 

市民の革命活動により、時代が移り変わろうとしています。

 

ジェラールの屋敷に辿りつきますが、ジェラールの体はラウルに盛られたクスリのせいで思うように動かない様子。そんなジェラールに向かってジャックは奥さんであるナタリーのことを訊きます。愛していたのか、と。

ジェラールも誤魔化すことなく、浮気女のナタリーを愛していた。でも、今はあんな女を愛していた自分に愛想をつかしていると告白するのです。そして、こんな自分でも俺を好きか、ジャック? と問いかけるのです。

ジャックはひたむき一直線で「愛しているジェラール」と告げるのです。生まれは貴族で、平民としてジェラールに育てられたと言っても過言ではないジャック。ジェラールの元で愛を学んでいます。

 

いいシーンだ、とじんわり涙ぐませておいて。ジェラールはある重大なことを思い出します。そうです、原稿の締め切り日が明日の昼までなのです!!!体が自由に動かせないジェラールの代りにジャックが書くことになります。ジェラールが言う言葉を書き写すという形です。

ここでジェラールが書いていた小説の内容が明かされます(笑) なんと、貴婦人受けの小間使い攻めのレズ小説なのです(笑) 人気がある作品でシリーズ化されています。

なんというか、市民革命真只中なのですが、ジェラールとジャックはこのレズ小説の執筆に明け暮れています。5年ほど月日が流れ、このレズ小説は11冊目です。しかも、ジャックが代筆する役割になってしまっています(笑)

仕事が充実している最中だったが、出版社のピレルが現れ、この小説が公安委員会から目をつけられていると言います。知恵のつき過ぎた女を魅力的に書き過ぎるのは良くないという理由です。しまいにはジェラール自体がいつギロチンに掛けられてもおかしくないという状況。すぐにフランスから離れるようにと忠告を受けます。実は、小説のことを密告したのはラウルでした。ラウルはすでに捕まっており、牢獄に入れられているのです。この時、同じく、(元)貴族であるジャック自身にも同じく危険であると知らされます。もちろん、ラウルが告げ口したのです。

身の危険を感じた二人は変装して田舎に逃避行します。ジェラールは女装、ジャックは男装で(笑)ちなみに二人の行先はバーデンバーデンです。ドイツですね~。こうやって、ドイツに逃げる貴族たちが多かったのでしょうかね。

逃避行中、休憩をとるため、フランスの田舎にある宿に泊まります。夕飯を済ませ、部屋に戻り一息ついたころ、ジェラールの顔の傷のせいで宿屋の主人に身分がばれてしまいます。二人は危機一髪、馬車で逃げるのですが。顔の傷があるせいで簡単に人に知られてしまうので逃げても無駄と思ったジェラールはジャック一人で逃げろ、と突き放すんです。

まあ、そんな勝手をジャックは許すはずもなく、どこまでも一緒だ、と告げるんです。覚悟を決めたとき、二人の元に公安委員会が現れます。

しかし、これは笑い話で。実は、二人の逮捕命令は取り消されてたのです。追いかけたのも、ジェラールの小説のファンだったからとかで。

晴れて自由の身となった二人は止まっていた宿に戻り、祝杯を挙げる。そして、その宿で、ついに二人は結ばれちゃいます!!!

なんというか、ジェラールさん。ジャックにかなり直接的な言葉で「したい」告げます(笑) 今まで、またされた分、4~5ページはあります(笑)

 

そして、翌日。ジェラールは妻の墓に寄りたいから、と言ってジャックを一人先に帰らせます。ジャックは秘書と料理人、そして出版社のピレルに温かく迎え入れられます。一方のジェラールは妻であるナタリーの墓の前で「ジャックを愛せなかったら、自分を許せなかった」と空に向かって呟くのでした。

(end)

 

文庫本には解説が書かれているのですが、よしなが作品すべてに通底するメッセージ「人はだれしも、許しを得て生きていく」があるとありました。確かに人は小さな間違いや過ち、罪を持っていて、普段はまるで気にしていないけれど、小さく重ねた出来事は積もり積もって肥大していくんですよね。けど、誰かに言い訳して、良いことして帳消しになんないかな、って思うことがあります。それって、許しを得たいってことなのかな。

ジェラールとジャックフランス革命期に生きた二人です。大変読みごたえがある作品でした。

 

 

 

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